氏名 : 狩野さん
高校 : 私立本庄東高校
スポンサークラブ : 熊谷南ロータリークラブ
カウンンセラー : 加藤 公一
派遣国 : ブラジル
ホストクラブ : 4760地区 Riboirao das Neves RC
留学期間 : 2000〜2001
ブラジルへの1人での留学は私にとってなんだったのだろうか。一年間外国で暮らすことによって何を得ることができたのだろうか。日本に帰国してからずっと自分に問いかけてきた。何度もこの原稿を書き、何度も消した。やっと見えてきた答えは’自分探し’だった。小さい頃からあまり友達に恵まれず、親友というものに縁がなかった私は、ずっとうわべだけの交流を続けてきた。親友を作りたいと思っていても、いつも本心から相手を信じられなかった。だから誰も知っている人がいないブラジルに行けば、これまでと違う新しい私になって1から友達作りができる気がした。事実、私はかなり友達に恵まれたと心底思う。ブラジルの空港に着いたその日の内からたくさんの友達ができ、親友もできた。そして帰国するまでには今までに経験したことのないくらい、というか日本でこれまでにできた友達の数以上に作ることができた。まるで夢でも見ているみたいにとても幸せで、毎日が充実していた。クラスメートは授業中にもかかわらず一生懸命ポルトガル語を教えてくれ、言葉がわからなくて戸惑ってる時はわかりやすく説明してくれた。他のクラスの生徒や、町や教会で出会った人も気軽に声をかけてきてくれ、いろいろな思い出をくれた。だけどやはり楽しいことばかりではなかった。かなかかポルトガル語が上達しなくて会話を十分理解できなかった為に誤解が生じたり、心情を上手く伝えられないことにイライラしたり、またそんな自分を歯痒く感じたりした。それから、恐ろしい体験をしたこともあった。その内の一つはショッピングに行ったときだった。突然後ろにいた男性が絶叫した。驚いて振り向くと数人の子供にズボンの中のお金を盗られ、掴み損ねた小銭がいくつもアスファルトの上に鋭い音をたてて落ちていくところだった。一瞬の出来事だった。子供たちはあっという間に逃げ、そこには悔しそうに罵声を吐いている男性がいた。ブラウン管を通して見るのと違って、現実は鬼気迫るものがあった。見てただけだったのに私の体は硬直し、あまりのショックにしばらく声が出なかった。日本では決してこんなことはなかった。それからしばらくして私も実際に体験することとなった。旅行中に家に保管しておいたお金をみんな盗まれてしまったのだ。私は、呆然とするしかなかった。いったい何が起こったのか。これは現実なのか。この先どうすればいいのか。全く何一つ考えることができなかった。気がついたときは、その時お世話になっていたホストの母に事の詳細を問い詰めていた。彼女は言った。「盗まれたのは半分だけ。残りの半分は犯人に脅されて渡した。」と。信じられなかった。なぜ警察に連絡しなかったのか。彼女はこうも言った。「’お金を渡さなければお前の家族を全員殺す’って言われた。ここではこういう時に警察を呼ぶと本当にみんな殺されてしまう。」第三者の立場から見れば、こんなセリフは冗談にしか聞こえないだろう。私でさえそう思ったのだから。でも現実として受け止めるしかなかった。よく考えれば確かにそうかもしれない。だけど・・・。心の整理がつくまで多くの時間を要した。お金が絡んでいたからかもしれない。数日後、この事件のことで彼女は私の前で泣きじゃくった。「ごめんね。ごめんね。」といいながら。私も辛かったけれど、彼女はもっと苦しみ、自分自身を責めていた。私はこの時になって初めて後悔した。最初にお金を全部貯金しておくべきだったと。当初私は言葉が全然わからないからそのことを伝えられないとか、面倒臭いからといって貯金しなかった。結局その安易な行動が今回の事件を惹き起こしてしまったといってもいいのかもしれない。多くの人に迷惑をかけ、そしえ我が子のように可愛がってくれたホストの母を苦しめることになってしまった。私が中途半端にしていなかったら、言葉がだめでも他の方法を探していたらこの事件は起こらなかったかもしれない。そう思うと自分の浅はかだった思考・行動が情けなくてたまらない。その後、その時のホストの母とは上手くいっている。相変わらず私を可愛がってくれ、いつも私のことを心配してくれている。
何度もこの事件についてのべようかどうしようか迷いました。だけど、ブラジルでの生活はこの出来事抜きではやはり語れませんので、述べさせてもらいました。そしてこれから留学する皆が私と同じ過ちをしないように・・・。私はこれを通して痛感しました。お金はそれまで優しく穏やかだった人を犯罪者に変えかねない。それほど甘く恐ろしい誘惑を内に秘めていると。それから生き延びる為に犯罪をせざるを得ない人がいること、また孤児が大勢いることも知りました。日本で何不自由ない暮らしをしている私たちと違って世界には毎日空腹が満たされることがない子供が大勢いる。これからの将来私は彼らの役に立てるように勉強していくつもりです。
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